メニューをスキップする。

ご入会はこちら


実例紹介

管理委託契約と長期修繕計画をダブル見直し。月々の管理費&修繕積立金を3割値下げ!

センターにご相談にいらっしゃる方に「お持ちください」とお願いする資料があります。それは、『管理規約』『管理委託契約書の重要事項説明書』『直近の総会議案書』、そして『長期修繕計画書』です。
この4点があれば、おおむね、その管理組合さんのおかれている状況がわかるからです。どの資料も、皆さんは問題が発生して、はじめて手にとってみる方が多いと思います。
特に『長期修繕計画書』はそれに基づいて毎月修繕積立金を支払っているというのに、数字の羅列のせいか、10年以上経過しないと修繕が行われないためか、まったく見たことがない方が多いのです。管理委託費を見直しして、それをせっかく修繕のために貯えても、適切な工事が適切な金額で行われなければすべては水の泡・・・。大切な管理組合のお金を「削る、貯める、そして守る」ためには、この『長期修繕計画書』に関心を持っていただきたいと考えています。
今回は、当センターが長期修繕計画の見直し業務をお手伝いし、月々の修繕積立金額を3割程度下げることができた埼玉県のSマンション(平成8年竣工、鉄骨鉄筋コンクリート造、地上11階建て、38戸)の例を紹介します。

Sマンション(築12年/38戸) 削る、貯める、そして守る

長計作成の目的は?


一級建築士 伊藤 梅雄

長期修繕計画の目的は、「マンションの生涯費用を把握し、適切な維持保全を行う」ことです。すなわち、今後20〜30年間に行う必要がある修繕の内容と時期、必要な費用の目安を明確にし、その費用を計画的に積立てていくことにあります。
平成9年に中高層共同住宅標準管理規約(国土交通省)の一部改正が行われ、長期修繕計画の作成・変更が管理組合の業務として追加、明文化されました。このため現在では、マンション分譲時に長期修繕計画が購入者に交付されるようになっています。これ以前に分譲されたマンションでは、その後管理会社主導により作成されているものもありますが、いまだに長期修繕計画が作られていないマンションも数多くあります。

どんな問題がある?

しかし、マンションの分譲前やその後管理会社主導で作られた長期修繕計画は、建物の実態を踏まえて作成されていないばかりか、分譲会社の販売政策などが色濃く反映されているものもあるようです。将来の大規模修繕工事の受注を視野に入れて、工事金額が高めに設定されているケースや、反対に分譲時の売りやすさを優先し、工事金額を圧縮して修繕積立金が極端に安く設定されているケースなどが見受けられます。もちろん、妥当な工事金額で長期修繕計画を作成している良心的な分譲会社や管理会社もあるでしょうが、あくまでも一般的なもので、それぞれマンションの実態を反映し適切な修繕周期が設定されているものは、極めて少ないものと思われます。

もう修繕!?

Sマンションでは、竣工後約10年が経過し、長期修繕計画書によれば、そろそろ大規模修繕工事を考える時期を迎えたことから、管理組合の依頼を受け平成19年4月に「建物1日診断」を行いました。外壁仕上などのグレードが高いことや施工状況が良好であることなどが要因で、汚れや不具合なども比較的少なく、全体的に10年も経過したとは思えないほど良好な状態を維持しているものと診断しました。大規模修繕工事の実施時期を、竣工後15年目くらいに設定しても問題ないことを提案し、報告書にまとめました。そして、引き続き長期修繕計画の見直し業務の委託を受け、同7月ごろから見直し作業にかかりました。

見直しの見直しで工事費2200万円ダウン

イメージ

Sマンションの長期修繕計画は、管理会社により平成11年に作成され、5年後の平成16年に見直されています。工事金額は、工事項目ごとに数量が記載され、それに単価を乗じて算出されたものでしたが、平成16年に見直されたものは、その間の建設物価の変動が少なかったにも拘らず、何故か、平成11年のものに比べ、工事単価が2〜3割安くなっていました。第1回目の大規模修繕工事金額について見てみると、平成11年は約6300万円だったものが、平成16年の長期修繕計画の工事金額は約5400万円と約900万円安くなっています。
 しかし、私が積算したものと比べ、数量は外壁タイル・吹付仕上面積、サッシ廻りのシーリング等主要な工事項目において3〜4割程度多く計上されているものがありました。単価も、安く見直された平成16年のものにおいても、私が財団法人経済調査会発行の積算資料や実勢単価等に基づいて出したものに比べて全体的に2〜3割程度高く設定されているのがわかりました。 結果、私が第1回目の大規模修繕工事金額として弾いた金額は約4100万円となり、安く なった管理会社の金額の約75%という結果になりました。当初から比べれば、同じ内容の工事なのに2200万円も安くなったのです。

修繕周期は適切?

また、管理会社が作成した長期修繕計画の修繕周期は一般的なものとして設定されていて、建築工事の主要なものでは第1回目の大規模修繕工事が12年目、一般鉄部塗装が4年毎となっています。設備工事においては照明器具交換が15年目、給水管更生が15年目に設定されています。このマンションの実態や使用材料等から判断し、私は、それぞれ15年目、7年毎、20年目、25年目に修繕周期を設定しました。

値下げは無理でも・・・!

管理会社の長期修繕計画では、1戸当り平均月額16,400円支払っていた修繕積立金を、平成20年(竣工後12年目)以降は17,000円、平成28年(竣工後20年目)以降は42,000円に値上げが必要との結果になっていました。しかし、私のシュミレーションでは、平成20年以降、現在の積立額の約75%である約12,000円に値下げしても、竣工後35年目の平成43年まで資金がショートすることはない結果となりました。
Sマンションでは、管理費の見直しも同時に行われ、管理費、修繕積立金を合わせて約3割値下げすることとし、平成19年12月の総会において決議されました。
Sマンションのように、値下げできるケースは珍しいと思われますが、反対に資金が不足がちなマンションにおいては、組合員の皆様の合意が可能な値上げ時期や金額を検討していくためにも、それぞれの建物の実態に即した長期修繕計画を作成していくことが重要なことです。

グラフ

Sマンション 山田理事長に聞く

A

今回センターに依頼した経緯は?

A

大規模修繕をどうやって適正な時期に適正な金額で行うか、また、どうやって現行の高い管理費・修繕積立金の引き下げを実現するかが大きな課題となっていた。
種々検討して来た中で、副理事長によって紹介されたNPO法人集住センターが中立性が高いことからコンサルティングを依頼することに決めた。

A

今回の長計見直し・管理費見直しの結果についてはどうお考えですか?

A

伊藤一級建築士による「建物一日診断」に基づいて「長期修繕計画」の作成を依頼した結果、修繕積立金の大幅引き下げを実現することが出来た。第一回の大規模修繕をやり遂げるためご尽力をいただきたいと考えている。また、管理費の大幅引き下げに繋がったのは、集住センターのアドバイスの下、管理会社3社によるプレゼンを実施できたことからだ。

A

管理組合の今後の抱負はなんでしょう?

A

管理組合、とりわけ理事会の能力アップが不可欠であり、管理組合の考え方と行動力が強固でなければ、何事もうまく行かないことを痛感している。
マンション価値の維持・向上と組合員の幸せを頭に入れた運営を進めて行きたい。